Minato City Preservartion Cultural Properties

港区文化財総合目録

紙本着色琴棋書画図屏風

所在地
白金台4-6-2
所有者
宗教法人 種徳寺
概要
六曲一双 絵画 令和4年10月13日指定

紙本金地着色、金砂子ちらしの六曲一双屏風。法量縦154.8cm、横327.6cmで右隻・左隻ともに「興以」の朱文方印一顆を有する。落款はないが、狩野派の絵師・狩野興以(生年不詳~1636)の筆によると考えられる。中国の高士が身に付けるべき四芸として尊ばれた「琴棋書画」を主題とし、右隻に琴に興じる高士とそれを聴く人々、舟上で棋をさす高士、左隻に書を嗜む高士に、絵筆を2本持ち岩間の水流を描く高士が描かれる。人物が多数登場するがそれぞれの表情は豊かであり、細かく個性の描き分けが行われている。また人物の衣服には金泥で模様が施され、人物や岩、樹木の周囲にはふんだんに色合いの異なる金砂子が散らされているなど、装飾的な要素も見て取れる。
興以は狩野探幽・尚信・安信の後見として教育にあたり、狩野派の進むべき方向を示唆したと考えられるが、基準作となる現存例が少なく比較検討が難しい。そのような中で「興以」の印を持つ本屏風は、師・狩野光信没後、探幽台頭以前の狩野派の画風を伝える作例といえる。なお種徳寺には興以の墓と、彼に連なる紀伊狩野家代々の墓が存在し、墓所へ向かう階段脇には、この墓を発見した岡倉天心による石碑も残されている。同寺が本屏風を所蔵したのは戦後であるものの、興以とのつながりは深い。港区として貴重な資料であるだけでなく、いわゆる江戸狩野派の初期を支えた興以の研究、ひいては狩野派研究の進展も期待できる。

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